


ガートナーが注目する6つのサイバーセキュリティトレンド
「うちの会社、セキュリティは大丈夫だろうか?」
セキュリティ担当者が毎日自問する質問だ。 ChatGPTのような生成AIが業務に導入され、社員がコラボレーションツールで会話する。クラウド環境では数多くのサーバーや機器が稼働している。果たして 従来の「防御」中心のセキュリティ戦略で、変化する環境に対応できるだろうか。
グローバル市場調査機関のガートナー(Gartner)は、2025年に向けたサイバーセキュリティの6大トレンドを発表した。ガートナーが提示した6つのサイバーセキュリティトレンドをまとめた。

1. 生成AIとデータセキュリティ:「セキュリティは学習データに従う」
最近、多くの企業が社内文書や顧客データをAIの学習に利用している。AIの学習に使用したデータが流出したり、誤って活用されたりすると、大きな問題になり得る点に注目しなければならない。
2024年初頭、あるグローバル保険会社は社内データを大規模言語モデル(LLM)にアップロードした際、顧客の個人情報の一部が外部に流出し、大きな問題となった。
この事件は、「AIセキュリティ」が単にモデル自体ではなく、データセキュリティから始めなければならないということを再認識させた。
モデルを学習させる際には、セキュリティを必ず考慮しなければならない。合成データ(synthetic data)を使用して個人情報を保護しながらも、AIの訓練品質を維持する必要がある。DSPM(Data Security Posture Management)のような新技術を用いて、クラウド上の機密情報の流れをリアルタイムで追跡するのも一つの方法だ。非構造化データ(文書、電子メール、画像など)も必ず管理しなければならない。AIはそれらのデータも学習するからである。
2. マシンアイデンティティ:「サーバーもAPIも『身元確認』が必要」
セキュリティチームは、これまで従業員IDを適切に管理することに努めてきた。しかし、管理対象は人間だけではない。 サーバー・API・自動化ボット(RPA)などのマシンアイデンティティ(machine identity)が増加している。
マシンアイデンティティはIDが割り当てられているものの、適切に管理されていないケースが多い。
Gartnerの2024年IAMリーダーシップ調査の結果、87%のセキュリティチームがマシンアイデンティティの管理責任を負っているが、実際に管理を行っているのはわずか半分に過ぎないことが明らかになった。
実際に、サイバー攻撃者の主要な侵入経路の一つが「放置されたマシンアイデンティティ」である。
2023年、米国の製造企業において、定期バックアップ作業に使用されていた自動化ボットアカウントがハッキングされ、データベース全体が暗号化される被害が発生した。マシンアイデンティティに多要素認証(MFA)が設定されていなかったためである。すべてのマシンアイデンティティに対して、本人確認と権限管理ポリシーを適用する必要がある。
DevOps環境においても「マシン専用のIAMポリシー」を策定し、自動化されたセキュリティ検査を実行する。セキュリティ教育の際には、人だけでなくシステムアカウントの重要性についても合わせて認識する必要がある。
3. セキュリティ技術の整理整頓:「ソリューションが多すぎると危険である」
多くの企業が「これは脅威インテリジェンス、あれはクラウドワークロード保護」といった形でセキュリティソリューションを追加してきた。
IBM企業価値研究所の調査によると、企業は平均29社のサプライヤーから提供された83種類のセキュリティソリューションを同時に使用していることが明らかになった。回答者の過半数(52%)は、複雑さがセキュリティ運用の最大の障害であると答えている。
これは不必要な複雑さとリスク要素だ。ツールは多いが相互に連携しておらず、運用は複雑で、予算ばかりが増えていく。ツールが増えるほど脅威も増加する。それぞれのツールが、悪意ある攻撃者の潜在的な侵入ポイントになり得るのだ。
ガートナーはこの状況を「テクノロジー過剰」と呼び、これからは「サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャ(CSMA)」のように、各セキュリティシステム間の連携性とデータ中心の構造へ整理しなければならないと強調している。
IBMの調査でも、統合プラットフォームを構築した組織は、セキュリティ事故を検知するのに平均72日、事故を封じ込めるのに平均84日を要したと明らかにした。複数のツールを単一のプラットフォームに統合することで、セキュリティ体制を強化するだけでなく、コストを削減し運用効率を向上させることができるということだ。
4. 実用的なAI(Tactical AI):「小さなAIが会社を救う」
セキュリティチームにAIを導入すると聞くと、大げさに考えてしまいがちだ。しかし、ガートナーは「小さなAI」から始めることを勧めている。
例えば、サイバーアラートを自動で分類してくれるAI、レポートを自動作成してくれるAI、セキュリティの脆弱性をAIが先にテストする自動化ツールなどだ。
5. セキュリティ文化と行動変容:「クリック修了率ではなく、実際の行動が変わったか?」
会社のセキュリティ教育は、1年に1回受講するだけで済む場合が多い。いわゆる義務的な防衛戦だ。
ガートナーは、行動を変えるセキュリティ文化プログラム(SBCP:Security Behavior and Culture Program)を導入すべきだと提唱している。
SBCPは文字通り、従業員のセキュリティ行動と組織のセキュリティ文化を変えるための戦略的プログラムである。
単に「メールに気をつけてください!」と注意を促して終わりにするのではなく、どの従業員がなぜそのようなミスをしたのか、どうすれば習慣的にセキュリティに対応した行動がとれるようになるかを考えるプログラムである。
従来のセキュリティ教育は、通常1年に1回、動画を見てクイズを解くという形式だ。従業員は仕方なく義務感から教育を受けるが、実際の場面ではミスをしてしまう。
ガートナーは、フィッシングメールのクリック率が高いチームには実際のインシデントを分析した上でカスタマイズされた教育を提供し、TeamsやSlackなどの日常ツールでクイズを送る方法がはるかに効果的であると提示した。教育の単純な修了率の代わりに、教育前後の行動の変化を指標として設定(例:クリック率、報告率、応答時間など)する。
6. CISOとセキュリティチームのウェルビーイング:「人が疲弊すれば、技術も崩壊する」
ガートナーは最後に、セキュリティチームのバーンアウト(燃え尽き症候群)を組織のリスクとして規定した。仕事は多く、リソースは不足し、攻撃は絶え間なく続くため、当然ながら疲弊する。その結果、離職率の増加、ミスの増加、対応速度の低下といった実際の脅威が発生する。
ガートナーは、HR(人事)と協力してセキュリティチーム専用の福祉プログラムを導入する方向性を提示した。仕事の優先順位を決め、重要度の低いものは思い切って削減する。最高情報セキュリティ責任者(CISO)のバーンアウトも組織レベルで管理すべきである。

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