


2025年に繰り返された大型事故は、私たちに不都合な真実を突きつけました。
「義務はすべて果たしたのに、突破されることがある」という現実です。
問題は特定の産業だけの不運ではなく、長年にわたる脆弱性管理、権限(アカウント)の整理、認証構造といった基本の不備が組織のあちこちで蓄積していたという点です。
このような状況において、政府は今年から、セキュリティを「言葉」ではなく「根拠」で可視化すること、そして事故の後ではなく事故の前から準備できるよう構造を変える仕組みづくりを始めました。
韓国のセキュリティ体系は、2000年代初頭のインターネットが普及し始めた時期に作られた規制を中心に設計されています。その間、世界はクラウド、モバイル、AI、プラットフォーム経済へと大きく変化しましたが、多くの組織のセキュリティは依然として「チェックリストを埋める」レベルにとどまっていました。セキュリティ担当者はチェックリストを埋め、経営陣は「義務事項はすべてクリアしたか?」と尋ねるだけで満足していたのです。
その根底には、「セキュリティは面倒で、お金ばかりかかるもの」という認識がありました。普段は目に見えにくいため、予算や人員の優先順位では常に後回しにされてきました。そして、事故が発生して初めて「あの時もう少し気を使っていれば」という後悔が押し寄せるのです。2025年は、まさにこの構造的な甘さと油断がどれほど蓄積されていたかを浮き彫りにした年でした。
こうした背景から、2026年からは韓国のセキュリティが3つの軸を中心に全面的に変わります。
情報保護開示の義務化、情報保護および個人情報保護管理体制(ISMS・ISMS-P)認証の実効性強化、そして政府・公共機関サイバーセキュリティ実態評価指標の変更です。
これら3つはそれぞれ民間企業、認証制度、公共部門を対象としていますが、共通のメッセージを含んでいます。
「セキュリティはもはや形式ではなく実質であり、言葉ではなく証拠であり、固定された基準ではなく進化する対応です。」
最初の転換:情報保護開示の義務化 - 「隠せない信頼の時代」
最初の変化は、情報セキュリティ開示義務対象の全面的な拡大です。
科学技術情報通信部は、1月9日に「情報保護産業の振興に関する法律施行令の一部改正案」を立法予告し、情報セキュリティ開示義務対象事業者の範囲拡大および利用者数算出基準を変更(案第8条第1項)すると発表しました。
従来は、CISO指定・申告、および売上高3,000億ウォン以上の企業のみに開示義務がありました。今回の改正案では、この内容を削除し、有価証券市場およびコスダック(KOSDAQ)市場の上場法人へと義務対象範囲を拡大(第8条第1項第2号改正)しました。利用者数の算出基準も、前年度末の直近3ヶ月平均から前年度の年間平均に改正(第8条第1項第3号改正)しました。さらに、前年度末基準で情報通信網法上の「情報保護管理体系(ISMS)」認証義務企業を、情報セキュリティ開示制度の義務対象者に含める(第8条第1項第4号新設)こととしました。
これまでは、極めて規模の大きい企業(売上高3,000億ウォン以上など)だけにサイバーセキュリティにどれだけ投資し努力しているかを公開する義務がありましたが、その範囲が拡大されたのです。 公的機関、金融会社、小企業の例外条項も大半が削除されます。
政府は2027年の適用を目標に、後続プロセスを進めています。2027年には、すべての対象上場企業が「セキュリティ成績表」を公開しなければならない状況になります。
この変化の意味は、単に「対象が増えた」ということにとどまりません。SKテレコム、KT、クーパン(Coupang)のインシデントを見ても、「大企業だから安全だろう」という信頼は粉々に砕け散りました。投資家や顧客は、今や「この企業のセキュリティ組織は適切に備わっているか?」、「今年セキュリティにどれだけ投資したか?」、「事故が発生した際にどのように対応したか?」を確認しようとしています。セキュリティが財務諸表のように公開情報となる時代が到来したのです。
さらに重要な変化は、開示の質です。
科学技術情報通信部は、開示制度の実効性を高めるため、作成基準と様式の改定を予告しました。単に「セキュリティにいくら投資した」という内容だけを記載するわけではありません。これからは、極めて具体的なセキュリティ活動をまとめる必要があります。
自社が保有するコンピュータとサーバーが何台あり、正確に把握・管理できているかを確認することは基本です。セキュリティのためにどのような内部規則を策定し運用しているかを開示しなければなりません。万が一ハッキングが発生した場合、どのように対処するのか具体的な計画も策定する必要があります。企業の重要事項を決定する取締役会が、セキュリティ問題を自ら直接管理しているかもチェック項目となります。これからの企業は「当社はセキュリティをしっかり行っています」と口先だけで言うのではなく、証拠を数字で示さなければなりません。
これは、開示が「うまくできている」というメッセージを飾るだけの場ではなく、企業間で比較可能なデータへと生まれ変わることを意味します。
今後は、「当社はセキュリティ投資が前年比30%増加、模擬ハッキングを4回実施、事故0件を維持」という具体的な数字が、投資家に対する強力な信頼のシグナルになります。反対に、準備のできていない企業は、開示するのを躊躇するようなお粗末な数値を公開せざるを得なくなり、投資家からの信頼低下につながります。
第二の転換:ISMS・ISMS-Pの実効性強化 - 「一度取得すれば終わりではない」
二つ目は、情報保護および個人情報保護管理体制(ISMS・ISMS-P)認証の実効性の全面的な強化です。
個人情報保護委員会と科学技術情報通信部は2025年 12月 8日、情報保護管理体制(ISMS)認証と、情報保護および個人情報保護管理体制(ISMS-P)認証(情報通信網法第47条、個人情報保護法第32条の2に依拠)の実효성強化に向けた制度改編を推進すると明らかにしました。
2025年に事故が頻発し、「認証が現実に追いついていない」という批判が高まったためです。
これに伴い、従来は自主的に運営されていたISMS-P認証を、公共・民間の主要な個人情報処理システム(主要公共システム、通信事業者、大規模プラットフォームなど)に対して義務付け、常時における個人情報安全管理体制を構築すると発表しました。
また、通信事業者や大規模プラットフォーム事業者など、国民への影響力が大きい企業に対して、強化された認証基準を設けて適用する計画です。個人情報保護委員会と科学技術情報通信部は、このための個人情報保護法および情報通信網法の改正を速やかに推進する方針です。
審査方式を全面的に強化し、予備審査の段階で重要項目を先行検証し、技術審査と現場実証審査を強化します。分野別の認証委員会を運営し、審査員を対象にAIなどの先端技術の教育を行うことで、認証の専門性を高める方針です。
事後管理も大幅に強化します。認証企業で漏洩事故が発生した際、適時に特別な事後審査を実施して認証基準を満たしているか確認します。事後審査の過程で認証基準の重大な欠陥が発見された場合、認証委員会の審議・議決を経て認証を取り消します。また、事故を起こした企業については、事後審査に投入する人員・期間を2倍に拡大し、事故原因や再発防止措置を集中的に点検すると明らかにしました。
これまで多くの企業が「認証は免許証のように一度取得すれば終わり」と考えていました。更新の際に書類さえきちんと提出できれば問題ありませんでした。しかし、認証を取得した企業がハッキングされる事故が相次ぎ、「うち、ISMS認証を取得していますけど…」という釈明が通用しなくなり、世間や投資家からの信頼が崩れ落ちました。
これに加え、脆弱性診断や模擬浸透テストなどの技術審査と、核心システムを中心とした現場実証が強化されます。書類だけでは通過できず、実際にシステムが安全かどうかを直接確認されます。漏洩事故が発生した場合は特別な事後審査を行い、重大な欠陥が発見されれば認証が剥奪される可能性があります。
一言で言えば、認証はもはや「一度取得すれば終わり」ではなく、常時管理と証明の始まりになります。SKテレコムは8年間も脆弱性を放置していましたが、認証を維持し続けました。しかしこれからは、重大な事故が発生すると特別な再審査を経て認証が取り消される可能性があります。「一度取得すれば一生もの」ではなく、「継続的に証明して初めて維持される」方式に変わるのです。対外的には、「認証を保有していること」自体よりも、「認証を維持するに値する運用のエビデンス」がより重要になる時代がやってくることを意味します。
企業にとっては負担が大きくなるかもしれませんが、裏を返せば、本当にしっかりと取り組んでいる会社が信頼を得られるルールが作られることになります。
👉 関連リンク https://www.pipc.go.kr/np/cop/bbs/selectBoardArticle.do?bbsId=BS074&mCode=C020010000&nttId=11660
3つ目の転換:政府・公共機関のサイバーセキュリティ実態評価指標の変化 - 「ネットワークを分割したかではなく、適切に保護できているか」
3つ目の変化は、政府・公共機関を対象としたサイバーセキュリティ実態評価指標の根本的な転換です。国情院は2025年末に公共機関サイバーセキュリティ実態評価指標を改定しました。今回の改定は単なる点数の調整ではなく、サイバーセキュリティを捉える基準そのものが変わったというシグナルです。
方向性は、「チェックリストを埋めること」から、「予算・訓練・復旧・ポリシーの転換」のように、運用の実力を実際に引き上げる項目に、より多くの点数を与える方向です。また、「ネットワークを分離したか?」ではなく、「AI・クラウド時代に合わせて、実際に安全に運用できているか?」です。
今回の指標改定の最大の武器は、新技術の導入を明確に誘導している点です。AIベースのセキュリティ監視システムを導入したり、国家ネットワークセキュリティフレームワーク(N2SF, National Network Security Framework)を構築した機関には、加点が付与されます。
新技術を使っても問題ないというメッセージを超え、「これからは使わなければ点数において不利になる」という明確な方向性の提示です。特にAIは、もはや業務自動化のためだけに使う技術ではありません。セキュリティにおいても、ログ分析、異常兆候の検知、対応の優先順位判断など、人間が見落としやすい領域を補完する核心的なツールとして定着しつつあります。2026年の評価は、こうした変化にしっかりとついていけているかどうかを問うものです。
また、事故を防ぐことを超えて、「耐えて復旧する力」を見ます。2025年を経て、サイバー攻撃や火災などによってシステムが停止すると、国民のサービスが即時に中断されることを経験しました。政府は、災害や事故への対応に関する項目の配点を引き上げました。もはや「計画がある」という言葉だけでは不十分です。実際にサイバーセキュリティ訓練を実施したか、予算を確保したか、復旧する準備ができているかが点数に直結します。セキュリティは宣言ではなく、準備・訓練・投資の結果です。
2026年のサイバーセキュリティ実態評価は、もはや単なる「チェックリスト」ではありません。実際に作動するセキュリティ体系、そして運用能力を評価する試金石です。
3つの転換が語ること
2026年から始まるこれら3つの変化は、異なる領域を対象としていますが、1つの首尾一貫したメッセージを含んでいます。
「セキュリティは今や『うまくやっている』と言う領域ではなく、公開し、証明しなければならない領域です。」
情報保護開示は民間企業に対してセキュリティの現状を透明に明らかにすることを求め、ISMS認証の強化は一度の検証ではなく継続的な証明を要求し、実態評価指標の変化は公共部門に対して形式的な基準ではなく実質的な統制能力を備えるよう要求しています。
全体として、セキュリティの重心が「形式的な遵守」から「実質的な運用」へと完全に移行しつつあります。
準備ができていない組織は、開示するのに恥ずかしい数値を公開せざるを得ず、認証を取得することが難しくなり、評価で低い点数を受け取ることになります。しかし、本当に優れている組織にとっては、セキュリティが信頼の尺度となり、差別化された競争力となり、対外的に「信頼できる組織」という強力なシグナルを送ることになります。2026年は単なる規制の変化ではなく、セキュリティに対する社会全体の認識が変わる元年になるでしょう。

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